岩堀万歳から三河万歳 印刷
作者: Kobinata Hidetoshi   

 7月7(土)〜7月16日(祝・月)開催の「岩堀万歳から三河万歳へ—伝承される祝福芸」(幸田町立図書館ギャラリー)を見る機会を得た。たまたま近くを通ることがあり、この催事を知ることとなった。



 愛知県は三河万歳で有名で、以前にも少しだけその伝統の実演を見たことがあった。この展示では、京都の伝統であった千秋万歳が三河地方に伝えられたことを伝える西尾市実相寺の『実相安国禅寺伝記』や、応仁の乱の時代に吉良太夫が大和国から伝えたとする『万歳由緒記』などの実物も展示されていた。


 ともかく、明治初期になるとその伝統は苦難の道をたどり、廃業する万歳師もでたようです。その中でも伝統の復興も行われ、安城市や西尾市の太夫が近隣の農村で才蔵役(太夫の相手役、鼓を打ち滑稽なしぐさで人を笑わせる)の若者を雇い、関東にも巡業させることが行われた。明治30年代に幸田村の岩堀地区や大草地区から参加した若者が、独立して万歳師となる人も出ることにより、昭和初期には岩堀万歳としての伝統ができあがった。現在では、幸田町三河万歳保存会としてこの伝統を継承するとともに、小学校の三河万歳クラブの指導も始めている。保存会は海外公演も数多く行っており、1995年に国の重要無形文化民俗文化財の指定を受けている。

 一時期、伝統の危機に瀕した三河万歳が、西尾市幸田町に残り、次世代の担い手への継承も視野に入れた活動となっていることを、心強く感じた。


最終更新 2012年 12月 11日(火曜日) 00:09