Asahi Cafe Night - カウシキ・チャクラバルティ・デシカン 印刷
2011年 9月 03日(土曜日) 21:41

 2011年8月23日(火)、浅草の夜。アサヒ・アート・スクエアで、多くのインド音楽ファンがインド・コロラトゥーラの歌声に酔いしれた。将来を期待される若手女性歌手カウシキ・チャクラバルティ・デシカン(Kaushiki Chakrabarty Desikan)が発来日したのだ。世界の音楽を日本に紹介する『スキヤキ・ミーツ・ザ・ワールド』(富山)の連動企画、「SUKIYAKI TOKYO」の舞台での日本デビューであった。甘美な歌声と精確なヴォーカルテクニックに裏打ちされたその歌唱は、聴衆にインド音楽芸術の新しい息吹を感じさせるものだった。

 1曲目ラーガ・ビハーグのアーラープ(自由リズム)部では、音階の第7度(ニ)音を強調し過ぎ、ラーガの性格がやや曖昧になったと感じられた。しかし、これに続く緩徐なテンポの12拍エークタールのバンディシュ(楽曲)部では明確にラーガを描き、中庸なテンポの10拍ジャープタール、急速なテンポの16拍ティーンタールと続く中で、サルガム(階名)唱法を駆使した超絶技巧を披露した。

 また、タブラー奏者スバシス・バッターチャリヤ(Subhasis Bhattacharya)との掛け合い(ジャワーブ・サワール)、サルガムとアーカール(母音唱法)で同じフレーズを模倣したり、と従来の声楽家に比し器楽的要素の強いステージを展開した。彼女の声域は広く、かつ優美さを失わず、既存CDと比べ、声に深みが増したように感じられた。これからの活躍と、さらに深い音楽性の発展が期待される。アジャイ・ジョーグレーカル(Ajay Joglekar)のハールモニアム(ポータブルオルガン)の伴奏もすばらしかったが、1つだけ当日のステージに注文を付けるとすれば、演者3人の中で、伴奏者たちの音量はもう少し低く抑えてもよかったと感じられた。

最終更新 2011年 9月 03日(土曜日) 22:02